「コロナワクチン mRNAワクチン-アナフィラキシー」の版間の差分
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==新型コロナワクチンのアナフィラキシーに関する原著論文== | ==新型コロナワクチンのアナフィラキシーに関する原著論文== | ||
+ | 上述の[[#米国CDCによる両mRNAワクチンのアナフィラキシー報告|米国CDCによるアナフィラキシー報告]]からさらに症例数が追加された原著論文が公開されました. | ||
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+ | [https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2776557 Shimabukuro TT, Cole M, Su JR. Reports of Anaphylaxis After Receipt of mRNA COVID-19 Vaccines in the US—December 14, 2020-January 18, 2021. Jama. 2021;325(11):2020-2021. doi:10.1001/jama.2021.1967]}} | ||
+ | CDC報告に比べて両ワクチン共に接種数が増加し,PfizerコミナティについてはCDC報告よりも発生頻度が減少しています.CDC報告では接種数が少なかったために偶然高めの発生頻度になっていた可能性があります. | ||
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+ | |+米国でのアナフィラキシー報告 JAMA 2021年2月12日掲載 | ||
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+ | *61例がアドレナリン投与 | ||
+ | *34例が救急外来受診 | ||
+ | *32例が入院 | ||
+ | **入院32例中18例がICU,7例が気管内挿管 | ||
+ | *61例が報告時点で転帰が判明しており,その全てが退院または快復 | ||
+ | *死亡例なし | ||
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+ | !接種回数 | ||
+ | |1回目 37例<br>2回目 4例<br>不明 6例 | ||
+ | |1回目 17例<br>2回目 1例<br>不明 1例 | ||
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+ | !Brighton分類 | ||
+ | |レベル1 21例<br>レベル2 23例<br>レベル3 3例 | ||
+ | |レベル1 10例<br>レベル2 8例<br>レベル3 1例 | ||
+ | |} | ||
==日本におけるPfizerコミナティのアナフィラキシー報告== | ==日本におけるPfizerコミナティのアナフィラキシー報告== |
2021年4月7日 (水) 23:06時点における最新版
総論 | ||||||
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治験+承認後研究 | |||||||
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目次
更新履歴
日付 | 更新内容 |
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2021年4月7日 | アナフィラキシー原著論文2編を追記 |
2021年2月6日 | 英国でのアナフィラキシーを追記 |
2021年1月19日 | 一般公開 |
米国CDCによる両mRNAワクチンのアナフィラキシー報告
米国ではPfizer, Moderna両ワクチンの緊急使用承認後に,同国のワクチン接種後有害事象集計システム「VAERS」を通じてアナフィラキシー様症状が集計され続けています.
それらをCDCが解析した結果,両ワクチンで次のとおりアナフィラキシーが確認されました.
Pfizerワクチン | Modernaワクチン | |
---|---|---|
発表日 | 2021年1月6日 | 2021年1月10日 |
集計期間 | 2020年12月14日-23日 (10日間) |
2020年12月21日-2021年1月10日 (21日間) |
発生件数 /接種本数 |
21例 / 1,893,360本 | 10例 / 4,041,396本 |
発生件数 /100万接種 |
11.1 / 100万接種 | 2.5 / 100万接種 |
年齢 | 中央値40歳,範囲27-60歳 | 中央値47歳,範囲31-63歳 |
女性割合 | 21例中19例(90%) | 10例全員(100%) |
接種後経過時間 | 21例中15例は接種後15分以内に発症 中央値13分,範囲2-150分 |
10例中9例は接種後15分以内に発症 中央値7.5分,範囲1-45分 |
アレルギー既往歴 | 21例中17例はアレルギー既往あり(薬剤6例,造影剤2例,食物1例,ワクチン0例) うち7例はアナフィラキシー既往あり |
10例中9例はアレルギー既往あり(薬剤6例,造影剤2例,食物1例,ワクチン0例) うち5例はアナフィラキシー既往あり |
治療内容 | 21例中18例がアドレナリン筋注,1例がアドレナリン皮下注により治療開始 | 10例全員がアドレナリン筋注により治療開始 |
経過 | 21例中3例がICU入院,1例が一般入院,17例が救急外来のみでの治療 | 10例中5例がICU入院(うち4例が気管挿管),1例が一般入院,4例が救急外来のみでの治療 |
転帰 | 報告時点で21例中20例が快復帰宅 | 報告時点で10例中8例が快復帰宅 |
英国保健省によるPfizerコミナティのアナフィラキシー報告
英国ではmRNAワクチン2製剤ともが承認されていますが,このうち実際に流通して接種が進んでいるのはPfizer(コミナティ)です.
英国保健当局は2021年2月5日付で接種後有害事象のレポートを公開しました.
Pfizerワクチン | |
---|---|
発表日 | |
集計期間 | 2020年12月8日-2021年1月24日 |
発生件数 /接種本数 |
101例(*) / 1回目540万本+2回目50万本 (接種本数は推計) |
発生件数 /100万接種 |
推計17.1 / 100万接種 |
転帰 | 全員が快復 |
- (*)アナフィラキシーの他にアナフィラキシー様反応も含む
- アナフィラキシー様反応(anaphylactoid reaction)とは,IgEを介さず肥満細胞または好塩基球が作用する非アレルギー反応を指し,一般にアナフィラキシーより軽症とされる;101例のうちアナフィラキシー様反応の内訳がどの程度であったか,どのような根拠でアナフィラキシー様反応と判断したかについては言及されていない
新型コロナワクチンのアナフィラキシーに関する原著論文
上述の米国CDCによるアナフィラキシー報告からさらに症例数が追加された原著論文が公開されました.
CDC報告に比べて両ワクチン共に接種数が増加し,PfizerコミナティについてはCDC報告よりも発生頻度が減少しています.CDC報告では接種数が少なかったために偶然高めの発生頻度になっていた可能性があります.
Pfizerワクチン | Modernaワクチン | |
---|---|---|
集計期間 | 2020年12月14日-2021年1月18日(35日間) | |
発生件数 /接種本数 |
47例 / 9,943,247本 | 19例 / 7,581,429本 |
発生件数 /100万接種 |
4.7 / 100万接種 | 2.5 / 100万接種 |
年齢 | 中央値39歳,範囲27-63歳 | 中央値41歳,範囲24-63歳 |
女性割合 | 47例中44例(94%) | 19例全員(100%) |
接種後経過時間 | 47例中34例は接種後15分以内に発症 中央値10分,範囲1-1140分(19時間) |
19例中16例は接種後15分以内に発症 中央値10分,範囲1-45分 |
アレルギー既往歴 | 47例中36例はアレルギー既往あり(薬剤6例,造影剤2例,食物1例,ワクチン0例) うち16例はアナフィラキシー既往あり |
19例中16例はアレルギー既往あり(薬剤6例,造影剤2例,食物1例,ワクチン0例) うち5例はアナフィラキシー既往あり |
治療内容 | 計63例中
| |
接種回数 | 1回目 37例 2回目 4例 不明 6例 |
1回目 17例 2回目 1例 不明 1例 |
Brighton分類 | レベル1 21例 レベル2 23例 レベル3 3例 |
レベル1 10例 レベル2 8例 レベル3 1例 |
日本におけるPfizerコミナティのアナフィラキシー報告
mRNAワクチンのアナフィラキシーの頻度の解釈
上記のとおり,米国では2021年1月10日までの時点で,アナフィラキシーがPfizer(コミナティ)で100万接種当たり11.1件,Modernaで100万接種当たり2.5件と報告されました.
また英国では2021年2月5日までの時点で,アナフィラキシー(一部アナフィラキシー様反応を含む)がPfizer(コミナティ)で100万接種当たり17.1件(推計)と報告されました.
米国での不活化インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーは,米国CDCの報告によると100万接種当たり1.41件とされています.
下記の研究では米国のワクチン全般でアナフィラキシーは100接種当たり1.31(95%信頼区間0.90-1.84)でした.
したがって,見かけの数字としては両mRNAワクチンとも,他のワクチンよりもアナフィラキシーを起こしやすい可能性があります.
ただし,いずれも新登場のワクチンであるため,接種担当者が他のワクチンよりも注意深く観察したり,より多く報告している可能性が否定できません.
また,「たかだか数100万件程度」の実績から判断しているため,今後数千万件や数億件接種されれば,アナフィラキシーの報告数が変動する可能性も残されています.もちろん,上記報告よりも大きな数字になるかもしれません.
アナフィラキシーの発生頻度については,引き続き注意深く情報収集する必要があります.
なお,アナフィラキシーはワクチンに限らずありとあらゆる薬剤投与で付きまとう副作用です.すべての医師・医療職が,常にいかなる薬剤においてもアナフィラキシーに備えているべきです.
- ちなみに私は研修医時代に,ナウゼリン座薬を処方した患者が診察室脇のトイレですぐに挿肛した途端にアナフィラキシーショックを起こされた経験があります.
参考までに,米国で1995年-2013年の18年間に報告された薬剤性アナフィラキシー19,836人(患者175万人中)の内訳をお示しします.
薬剤 | 100万患者当たり 発生率(*) | |
---|---|---|
抗菌薬 | ペニシリン | 4590 |
スルフォンアミド | 1510 | |
セファロスポリン | 610 | |
マクロライド | 380 | |
キノロン | 370 | |
NSAIDs | 1300 | |
オピオイド | 980 |
Pfizerワクチン | 米国 11.1 英国 17.1 |
---|---|
Modernaワクチン | 米国 2.5 |
AstraZenecaワクチン | 英国 8.7 |
- (*)原著では1万患者当たり発生率で記載;サイト管理者による換算標記
ご覧のとおり,ワクチンよりも日常的な薬剤の方が遙かにアナフィラキシー頻度が高いことがわかります.
新型コロナワクチンで過度にアナフィラキシーをおそれるのは控えるべきでしょう.
もちろん,新型コロナワクチンに限らず,ワクチン接種時にはアナフィラキシーに備えた薬剤・医療機器の準備と緊急対応訓練を重ねるべきであることは,言うまでもありません.