「コロナワクチン ウイルス遺伝子の接種に理論的危険性はない」の版間の差分
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==ウイルス遺伝子を体内に注入することと,セントラルドグマ== | ==ウイルス遺伝子を体内に注入することと,セントラルドグマ== |
2021年3月26日 (金) 20:16時点における版
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目次
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2021年1月19日 | 一般公開 |
ウイルス遺伝子を体内に注入することと,セントラルドグマ
mRNAワクチンもウイルスベクターワクチンも,コロナウイルスの遺伝子をmRNAを直接またはベクターウイルスを介して,体内に注入します.
このことから,「ウイルスの遺伝子が自分の体(細胞)に悪影響を残したらどうしよう,それが将来の子どもや孫に影響したらどうしよう」という漠然とした不安を抱く方が少なくないようです.
しかし古典的な分子生物学(生化学)の知識により,それが杞憂であることがわかります.
かつて勉強した「セントラルドグマ」ですね.
セントラルドグマとは
「遺伝子」という言葉は生物個体を形づくる情報のことであり,「ゲノム」とも呼びます.
個体の情報は親から子へも受け継がれるので「遺し伝える」という日本語が使われていますが,この情報の本来の目的は個体の体すべてを作ることなんですね.
遺伝子は情報を指す言葉ですが,その物質としての正体は,ヒトを含む殆どの生物の場合で「DNA(デオキシリボ核酸)」という巨大分子です.より正確には「塩基」が超超超たくさんつながったひも状の分子です(塩基が連なった分子構造のことを「核酸」と呼ぶこともあります).ひも状の長い分子は2本ペアになっており,お互いがお互いの周りをグルグル回ってらせん状になっている,いわゆる二重らせん構造をしています.
たくさんあるウイルスの一部のみ,「RNA(リボ核酸)」という巨大分子を遺伝子に使っています.
DNAとRNAは塩基単位で見ると酸素分子が1個多いか少ないかというわずかな違いだけですが,そのせいで巨大分子としての安定性に大きな影響があります.DNAよりもRNAの方が分子として安定性が悪くて壊れやすいという性質があります.細胞を基本とする生物の遺伝子はすべてDNAです.細胞という形ではないウイルスの,そのまた一部だけが,RNAを遺伝子にしてるんでしたね.
ここからはヒト細胞(をはじめとする真核細胞)の話です.
遺伝子であるDNAは,細胞の真ん中にある「細胞核」の中に保管されています.超超超長い二重らせんのひもは,まるで長いLANケーブルを束ねて丸めるように,折り曲げられて束ねられてまた折り曲げられて束ねられてグリグリと塊になっています.この塊が「染色体」と呼ばれ,光学顕微鏡でも見ることができる大きさです.
さて細胞が「自分をコピーした細胞を作ろう」「役に立つタンパク質を作って細胞の外に送り出そう」と考えると,染色体の束をほどいてDNAをひも状に戻し,DNAの二重らせん構造は専用の酵素によって1本ずつに分離されます.この片側1本のうち,自分のコピーやタンパク質を作るための情報(意味と法則性がある塩基の並び)が収まっている部分に専用酵素がかぶさって,まるでスキャナかハンディコピー機のように情報(塩基の並び)を複製していきます.
情報を複製?そう,1本ずつに分離されたDNAの塩基の並びと意味合いが同じになるように,新しくRNAを作っていくんですね.え?新しく作るのはDNAじゃなくてRNAなの?そこは新型コロナワクチンの本題からはあまり関係ないのでツッコまないでください.とにかくDNAのコピーはRNAを使って作られるんです.光沢紙に印刷された内容を再生紙にコピーするようなもんだと考えてください.
コピーRNAを作るまでは細胞核の中で行われますが,作られたコピーRNAはその後細胞核の外に漂い出ていきます.
細胞核の外に広がっているのは「細胞質」でしたね.さらに外側を「細胞膜」(植物の場合はプラス「細胞壁」)で囲まれて,細胞質の中には水に溶け込んだアミノ酸とか酵素とかその他色々がドロッと混ざり合ってフワフワ浮いています.
細胞質の中に漂い出てきたコピーRNAは,やがてフワフワ浮いている専用の酵素に出会います.専用酵素にはひも状のRNA分子をはめ込む溝があって,コピーRNAを溝にはめ込むと自動的に塩基の並びを読み取りはじめます.塩基の並びは,どういうわけか3つセットで1つのアミノ酸に対応してるんでしたね.誰だよそんなこと考えたやつ天才だろ.
酵素はコピーRNAの塩基並びを読み取りながら,近くでフワフワ漂ってるアミノ酸を適当にキャッチしては,対応するアミノ酸を読み取った順番どおりに結合させていきます.コンピュータ制御の製造ライン機械と全く同じ仕組みです.誰だよそんなこと考えたやつ天才だろ.
そうしてコピーRNAの塩基並びを全部読み取り終わると,目的のタンパク質が完成しているわけです.
タンパク質完成後のコピーRNAの行方は?RNAという分子自体の安定性が低いので,細胞質の中で数分~数日以内に分解されてしまいます.光沢紙からコピーした再生紙は内容だけ読んだらすぐにシュレッダーしてしまうようなものですね.
もうおわかりですね.「コピーRNA」と便宜的に呼んできたものが,セントラルドグマにおける「メッセンジャーRNA,mRNA」のことですね.
すなわち,【細胞核:DNA→mRNA】→mRNA→【細胞質:mRNA→タンパク質】という一方向の流れがあり,逆流はしない,という大原則のことをセントラルドグマと呼ぶんでした.
- ※RNAウイルスのうち更に一部の逆転写酵素を持つウイルス(レトロウイルス)はセントラルドグマからは逸脱しますが,コロナウイルスも3ワクチンも逆転写酵素は全く持っていません.ヒトは細胞自身の寿命をコントロールするために持っている特殊な酵素に逆転写機能があるものの,細胞寿命にかかわる特定の並びのRNAにしか反応しないため下記で説明する流れには無関係です.
ここで,ウイルスがヒトに感染した場合は,ウイルス遺伝子(RNAまたはDNA)がヒト細胞内に放出されます.ウイルス遺伝子がヒト細胞質のアミノ酸等を使ってウイルスのコピーを作るわけです.
RNAウイルスでは細胞質内でmRNAから直接,DNAウイルスではいったん細胞核内でmRNAを作ってから再び細胞質内で,という過程の違いはありますが,ウイルス感染でもセントラルドグマに相当することがヒト細胞内で起きるのです.
当然,ウイルス感染でもセントラルドグマの逆流はありません(※レトロウイルスを除く).
そもそもウイルスはどのようにヒト細胞に感染するのか
ウイルスは遺伝子(ウイルスによってDNAかRNAのどちらか)とそれを包む殻だけでできている,きわめてシンプルな存在です.
ウイルスが体内に侵入してヒトの細胞の細胞膜にくっつくと,条件が合っていれば(=レセプターがあれば)ヒトの細胞はうっかりウイルスを細胞質の中へ招き入れてしまいます.ヒト細胞いったい何やってんだよというツッコミはなしにしてください.
RNAウイルスの場合は,まんまと細胞質内に入った後,殻の中から自分の遺伝子RNAを細胞質内に放出します.
自分のRNAを基に,ヒト細胞質内の塩基を使ってRNA自身のコピーを作り,さらにアミノ酸やらを使ってタンパク質で自身の殻を作ることで,自分を大量コピーしようという了簡なわけです.
DNAウイルスの場合は,まんまと細胞質内に入った後,さらに細胞核内にまで侵入します.そこで自分の遺伝子DNAを細胞核内に放出するのです.
細胞核の中で,ヒトDNAからmRNAを作る仕組みにちゃっかり便乗してウイルスDNAからmRNAを作り,それを細胞質内に出してもらってタンパク質を作って殻とし,自分を大量コピーしようという了簡なわけです.
RNAウイルスにしても,DNAウイルスにしても,盗人猛々しいとはまさにこのこと.
mRNA/ウイルスベクターワクチンがヒト遺伝子に影響するはずがない理由
さて,今回の3ワクチンは,新型コロナウイルスの長いRNAを解析してヒトが免疫獲得できるようなウイルスタンパク(「スパイクタンパク」)を作る塩基並びを見つけ出し,それと同じ並びになるように人工的に塩基を並べたものを使っています.
mRNAワクチンの場合は直接mRNAになるように塩基を並べ,ウイルスベクターワクチンの場合はベクターウイルス(チンパンジーアデノウイルス;DNAウイルス)の遺伝子の中に塩基を人工的に組み込んでいます.
よって,Pfizer/ModernaのmRNAワクチンの場合はmRNAがヒト細胞に入ったら直接ヒト細胞質内で,AstraZenecaのウイルスベクターワクチンの場合は組み込まれたチンパンジーアデノウイルスの遺伝子(これはDNA)がいったんヒト細胞核内に入ってmRNAを作らせた後にヒト細胞質内で,新型コロナのスパイクタンパクを作るわけです.
- 当然ですが,チンパンジーアデノウイルスの遺伝子DNAはヒト細胞核の中には入りますが,ヒト自身の遺伝子DNAに組み込まれるようなことは原理的にあり得ません.アデノウイルス属そのものが逆転写酵素を持たないので,どう逆立ちしてもアデノウイルスが自分のDNAをヒトDNAに組み込むことは不可能なのです.
そして,スパイクタンパクを作った後のワクチン由来mRNAは,分子として不安定であるために,数分~数日で分解されて消えてなくなります.
繰り返しますが,ヒトDNAのセントラルドグマと同じ原理が3ワクチンでも働きます.
すなわち,ワクチン由来のmRNAは,ヒト細胞質から細胞核へと侵入することはあり得ないし,ましてやそれがヒトDNAに組み込まれて長く遺伝情報を保ち続けるなんてことはもっとあり得ないのです.
ヒトDNAを一冊の本にたとえるなら,そこから作られるmRNAは本のページのコピーです.
mRNAワクチンのmRNAはその本とは全く別のチラシのコピーであり,ウイルスベクターワクチンのDNAもまたその本とは全く別のパンフレットにチラシのコピーをのり付けしたようなものです.
本のページのコピーをどれだけ作っても,元の本の中に差し込んで背表紙にのり付けしてページを増やすことはできません.
ましてや,本の中にチラシのコピー(パンフレットから剥がしてきたものも含む)を無理矢理差し込んで背表紙にのり付けするなど,到底不可能です.
こうした説明でも不安が消えないなら,次のことを考えてみてください.
どんな人でも生まれてから今日までの間に,何十回,何百回と何かのウイルスに感染してきています.
もしもワクチンのmRNAやウイルスベクターワクチンのDNAがヒト細胞に組み込まれてしまうなら,人は何十回何百回とウイルス感染を繰り返すたびにウイルス遺伝子(RNAまたはDNA)を自分のDNAの中に組み込んでしまっているはずです.ノロウイルスに感染したら“ノロウイルス人”に,インフルエンザウイルスに感染したら“インフルエンザ人”に,新型コロナウイルスに感染したら“新型コロナウイルス人”に,生まれ変わってしまうはずです.
でも幸いに,そんな“ウイルス人”は誕生していません.セントラルドグマに反することは起きないからです.
ということは,mRNAワクチンだってウイルスベクターワクチンだって,そこに含まれる遺伝子がヒト遺伝子に組み込まれてしまうなんて,あり得ないことなのです.