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{{Floating_Menu}} ==更新履歴==*2021年7月15日 作成*2021年7月18日 一部表現を修正 ==抗体 免疫グロブリン immunoglobulin と抗体 antibody と免疫グロブリン immunoglobulin==「抗体 antibody」という用語から下記の構造の分子を思い浮かべることでしょう.antibody」という用語からは,多くの医療職が下記の構造の分子を思い浮かべることでしょう.
[[file:Antibody.svg|300px]]
厳密には,物質としての分子を指す場合は「免疫グロブリン しかし厳密には,物質としての分子を指す場合は「免疫グロブリン immunoglobulin」と呼ぶべきでしょう.
「抗体」とは,何らかの抗原 antigen(の表面の特定のエピトープ epitope)に結合する能力がある免疫グロブリンを指します.
|アルブミン<br>albumin
|-
|アルファ1グロブリン<br>(α1グロブリン)<br>alpha1 globulin
|-
|アルファ2グロブリン<br>(α2グロブリン)<br>alpha2 globulin
|-
|ベータグロブリン<br>(βグロブリン)<br>beta globulin
|-
|'''ガンマグロブリン<br>(γグロブリン)<br>gamma globulin'''
|-
|colspan="2"|繊維状タンパク質<br>fibrous protein
====IgA の発見と命名====
さらに研究が進み,IgG と IgM は共にガンマグロブリンおよびベータグロブリンからも発見されました.一方で,ガンマおよびベータには「IgG は共にガンマグロブリンおよびベータグロブリンからも発見されました.:再々掲:この点でも,「ガンマグロブリン」と「免疫グロブリン」は用語として明確に使い分けるべきです.一方で,ガンマおよびベータには「IgG でも IgM でもない免疫グロブリン」が混ざっていることがわかってきました.それらはいったん「β<sub>2A</sub>グロブリン」および「γ<sub>1A</sub>グロブリン」と命名されます.
その後1959年に,Heremans それらは1959年,Heremans らによって新しい単一の免疫グロブリンだと確認され,「IgA」または「α免疫グロブリン」に変名されます.「A/α」が選ばれた理由は,変名当時に確立された命名規則に従ったためのようですが,詳細は不明です.:ややこしいのですが,この「α」はアルファグロブリンとは関係ありません.また,アルファグロブリンからは最終的に免疫グロブリンが発見されることはありませんでした.:ややこしいのですが,この「α」はアルファグロブリンとは関係ありません.また,アルファグロブリンからは最終的に免疫グロブリンが発見されることはありませんでした.
====IgD の発見と命名====
それを受けて,Fahey および Rowe が「抗原E」に反応する特異抗体が新たな免疫グロブリンであることを発見し,「IgE」と命名しました.
====IgG/M/A/D/E -クラス- の命名由来の整理====以上を整理すると下表のようになります.以上のような経緯で命名された免疫グロブリンG/M/A/D/Eは,現代では「免疫グロブリンクラス」と呼ばれます. クラスの命名由来を整理すると,下表のようになります.
{|class="wikitable"
|-
!style="width:2em4em;"|クラス!style="width:30em25em;"|命名由来
|-
!IgG
*アルブミン
|-
|アルファ1グロブリン<br>(α1グロブリン)<br>alpha1 globulin
|
*α1アンチトリプシン
*α1フェトプロテイン
|-
|アルファ2グロブリン<br>(α2グロブリン)<br>alpha2 globulin
|
*α2マクログロブリン
*レチノール結合蛋白
|-
|ベータグロブリン<br>(βグロブリン)<br>beta globulin
|
*トランスフェリン
*β2ミクログロブリン
|-
|'''ガンマグロブリン<br>(γグロブリン)<br>gamma globulin'''
|
*免疫グロブリン**'''IgG'''**'''IgM'''**'''IgA'''**'''IgD'''**'''IgE'''
|-
|colspan="3"|繊維状タンパク質<br>fibrous protein
==分子としての免疫グロブリン immunoglobulin==
免疫グロブリンは下記の構造をしています.上述の歴史で発見・命名された5種の免疫グロブリンは,研究の進展により現在では下図のような分子構造を共通して持っていることがわかっています. この図は'''単量体 monomer としての'''構造模式図です.
[[file:Antibody basic unit.svg|400px]]
左右対称の構造には,H鎖 heavy chain(図の<span style="color:royalblue;">'''青色'''</span>と<span style="color:khaki;">'''黄色'''</span>) と L鎖 light chain(図の<span style="color:lightgreen;">'''緑色'''</span>と<span style="color:hotpink;">'''赤色'''</span>)があります.より長く分子量がより大きい(重い heavy)H鎖は,左右一対で「Y」の字のような形を作っています.より短く分子量がより小さい(軽い light)L鎖は,「Y」の上側を挟むように付いています.
===可変領域 抗原結合部位 antigen-binding region,可変領域 variable domain,定常領域 constant region,抗原結合部位 antigen-binding regiondomain===H鎖とL鎖それぞれの先端は,抗原(のエピトープ)の形に応じて分子構造がダイナミックに変化する領域であり,「可変領域 variable domain」と呼びます(図の「V<sub>H</sub>」および「V<sub>L</sub>」).冒頭で述べたとおり,「免疫グロブリンという分子」には「抗体という機能」が備わっています.抗体はもちろん抗原に結合する能力を持っています.
可変領域以外のH鎖およびL鎖を「定常領域 constant domain」と呼びます.ではこのY字型の分子のいったいどこに抗原分子は結合するのか?
上に枝分かれした先の先端2ヵ所に結合するんでしたね. 先端2ヵ所は図のとおり,H鎖の先端とL鎖の先端の組み合わせで出来ています.組み合わせを「抗原結合部位 antigen-binding region」と呼び,それぞれの先端パーツは図のとおり「V<sub>H</sub>」および「V<sub>L</sub>」と呼ばれます. 抗原とは外部から侵入する異物ですから,ありとあらゆる形があり得ますね.これらに結合するため,抗体もありとあらゆる形を用意せねばなりません.結合する部位は V<sub>H</sub>とVと V<sub>L</sub>が組み合わさった箇所で抗原(のエピトープ)に結合します.これを「抗原結合部位 antigen-binding region」と呼びます.の組み合わせパーツであり,これらは抗原(のエピトープ)ごとに異なる形で生成されます. 抗原ごとに異なる分子構造で生成される V<sub>H</sub> と V<sub>L</sub> のことを「可変領域 variable domain」と呼びます.「V」は「variable」の頭文字ですね. 可変領域に対して,抗原によらず同じ分子構造で生成される部分を「定常領域 constant domain」と呼びます.
===H鎖のアイソタイプ isotype===
H鎖の分子構造にはアイソタイプ(同形)が5種類あることがわかっています.5種類のアイソタイプは下記のとおり命名されています.免疫グロブリンの定常領域は「抗原によらず同じ分子構造」ではありますが,H鎖の定常領域は IgG/M/A/D/E の各クラス間では少しずつ異なっています. IgG/M/A/D/E のクラス間で異なる分子構造を「アイソタイプ」と呼び,ローマンアルファベットに対応するギリシャ文字で呼ばれます.アイソタイプは当然5種類です.
{|class="wikitable
|-
!H鎖のアイソタイプstyle="width:8em;"|免疫グロブリン<br>クラス!style="width:7em;"|H鎖<br>アイソタイプ
|-
|IgG
|γ ガンマ
|-
|IgM
|μ ミュー
|-
|IgA
|α アルファ
|-
|IgD
|δ デルタ
|-
|IgE
|ε エプシロン
|}
 
==免疫グロブリンの各クラス同士は何が違うのか?==
免疫グロブリンは上述の歴史のとおり5種類のクラスが発見され,その分子構造も後に明らかにされました.
 
では,これら5種類はいったい何が違うのでしょうか?
 
抗体という機能を果たすためになぜヒトは5種類もの異なる免疫グロブリンを持っているのでしょうか?
 
どのクラスもヒト血清から発見されましたが,5種類とも血中に混在して漂っているんでしょうか?
 
抗原が侵入したらいったいどのクラスが結合しに行くんでしょうか?
 
そもそも5種類の役割に違いはあるんでしょうか?
 
 
現代免疫学では,5クラスの免疫グロブリンがそれぞれヒト体内の異なる場所で発現され,抗体としてもそれぞれ異なる役割を担っていることを明らかにしています.
 
本項は一般的な免疫学の教科書に記載されていることを基にしています.
 
IgD の機能については,教科書的には「ほとんど不明」ですが,2018年発行の下記論文を参考にしました.
{{Quote|content=[https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/eji.201646547 Gutzeit C, Chen K, Cerutti A. The enigmatic function of IgD: some answers at last. Eur J Immunol. 2018;48(7):1101-1113. doi:10.1002/eji.201646547]}}
 
===免疫グロブリンのクラスごとの重合体 polymer===
前述の免疫グロブリン模式図は単量体を示しましたが,実際には生体内ではクラスごとに異なる重合体 polymer で存在しています.
 
単量体 monomer,二量体 dimer または五量体 pentamer の3種類のいずれかです.
 
単量体はさておき,なぜ二量体や五量体を形成する必要があるのか,重合体を形成することに分子としてどのようなメリットがあるのか,サイト管理者が調べた限りではわかりませんでした.
 
結合する確率が上がるとか,細胞内移送や細胞膜表現に有利とか,何か分子学的な機序があるんだと想像します.
 
具体的には下記のとおりです.なお,IgG/D/E はいずれも単量体ですが,分子構造はそれぞれ少しずつ異なります.
 
{|class="wikitable
|-
!style="width:7em;"|H鎖<br>アイソタイプ
!style="width:8em;"|免疫グロブリン<br>クラス
!style="width:15em;"|重合体
|-
|γ ガンマ
|IgG
|
*単量体 monomer
|-
|μ ミュー
|IgM
|
*分泌型:五量体 pentamer
*B細胞受容体として:単量体
|-
|α アルファ
|IgA
|
*粘膜分泌型:二量体 dimer
*血中分泌型:主として単量体
|-
|δ デルタ
|IgD
|
*単量体 monomer
|-
|ε エプシロン
|IgE
|
*単量体 monomer
|-
|colspan="3"|[[file:免疫グロブリンクラス (CC BY NC SA 3.0).png|450px]]
|}
ギリシャ文字のアルファベットは「α,β,γ,δ,ε,ζ,……」で,「μ」は12番目です.===免疫グロブリンのクラスと発現部位および機能===前述のとおり免疫グロブリンはクラスごとに異なる重合体で存在しますが,さらに,ヒト体内での発現部位と機能も異なります. 免疫グロブリンを産生する細胞は,B細胞およびその終末分化である形質細胞ですね.よって,免疫グロブリンの発現部位は,B細胞および形質細胞が体内で分布している部位と連動します.:B細胞は産生した免疫グロブリンを自らの細胞表面に発現し(細胞膜から生えている状態),免疫グロブリンは抗原に対する受容体として機能します.この場合免疫グロブリンはB細胞受容体 B cell receptor とも呼ばれます.:形質細胞はB細胞が分化成熟したもので,免疫グロブリンを細胞表面でなく細胞外へ分泌(放出)します.分泌された免疫グロブリンは血中や組織内で遊離状態で存在し,侵入する抗原に結合します.:B細胞も形質細胞も,1つの細胞はただ1種類の特異的な免疫グロブリンを産生します.ヒトが例えば1,000種の抗原に対する抗体すなわち免疫グロブリンを産生できるとしたら,異なる1,000種のB細胞および形質細胞を持っていることになります.
5種類がなぜこのような命名なのか,もしアルファベット順ならなぜβがなくて飛び番(?)のμが含まれているのか?
それは次のサブクラスの項で説明しましょう.
===免疫グロブリンのサブクラス===上記5つのH鎖アイソタイプに従って,免疫グロブリンもまた5つのサブクラスに分類されています.{|class="wikitable" style="min-width:500px;"
|-
!H鎖のアイソタイプstyle="width:7em;"|H鎖<br>アイソタイプ!style="width:8em;"|免疫グロブリン<br>クラス!免疫グロブリンのサブクラスstyle="width:15em;"|重合体!style="width:12em;"|発現部位!style="width:20em;"|機能
|-
|γ ガンマ|IgG|*単量体 monomer|*血中*胎盤通過(唯一)*全Ig中75%|IgG*病原微生物のオプソニン化および中和*補体の活性化*抗体依存性細胞障害作用*種々の過敏性反応
|-
|α アルファμ ミュー|IgM|IgA*分泌型:五量体 pentamer*B細胞受容体として:単量体|*血中*全Ig中10%|*抗原刺激に対して最初にB細胞から分泌*抗原に対する凝集作用→抗原不動化*補体古典経路の活性化
|-
|μ ミューα アルファ|IgA|IgM*粘膜分泌型:二量体 dimer*血中分泌型:主として単量体|*粘膜分泌物*乳汁*全Ig中15%|*粘膜上皮細胞にはIgA二量体を粘膜表面へ移送する特殊なレセプターがある
|-
|δ デルタ|IgD|*単量体 monomer|*血中|IgD*B細胞表面のみに発現*実は機能が殆どわかっていない
|-
|ε エプシロン|IgE|*単量体 monomer|*肥満細胞および好塩基球の細胞表面*全Ig中0.002%|IgE*アレルギーに関与**肥満細胞表面に結合したIgE同士を抗原が架橋すると脱顆粒を生じてⅠ型アレルギー*寄生虫免疫
|}

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