「Neutralizing antibody and its assay」の版間の差分

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ヒトの血清を電気泳動したところ,ある程度のかたまりがいくつか観察されたので,ギリシャ文字を使って命名したんですね.
 
ヒトの血清を電気泳動したところ,ある程度のかたまりがいくつか観察されたので,ギリシャ文字を使って命名したんですね.
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https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/26/Electrophoresis.png
 
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/26/Electrophoresis.png
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なおこの時代の電気泳動技術では,分子量に従った分別はできなかったようです.つまりアルファ~ガンマは分子量(重さ)順ではありませんし,現代の科学技術では各グロブリンの中に種々の異なるタンパク質が混ざり合っていることがわかっています.
 
なおこの時代の電気泳動技術では,分子量に従った分別はできなかったようです.つまりアルファ~ガンマは分子量(重さ)順ではありませんし,現代の科学技術では各グロブリンの中に種々の異なるタンパク質が混ざり合っていることがわかっています.
  
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**繊維状タンパク質 fibrous protein
 
**繊維状タンパク質 fibrous protein
 
**天然変性タンパク質 disordered protein」「膜タンパク質 membrane protein」
 
**天然変性タンパク質 disordered protein」「膜タンパク質 membrane protein」
 
  
 
==分子としての免疫グロブリン immunoglobulin==
 
==分子としての免疫グロブリン immunoglobulin==

2021年7月15日 (木) 17:05時点における版

抗体 antibody と免疫グロブリン immunoglobulin

「抗体 antibody」という用語から下記の構造の分子を思い浮かべることでしょう.

Antibody.svg

厳密には,物質としての分子を指す場合は「免疫グロブリン immunoglobulin」と呼ぶべきでしょう.

「抗体」とは,何らかの抗原 antigen(の表面の特定のエピトープ epitope)に結合する能力がある免疫グロブリンを指します.

分子の呼称が「免疫グロブリン immunoglobulin」,その抗原(エピトープ)結合機能に目を向けた呼称が「抗体 antibody」と言えるでしょう.

そもそもグロブリン globulin とは

そもそもグロブリン globulin とは何でしょう?

Wikipedia記事の引用で恐縮ですが,無数にあるタンパク質を分類する古典的な方法に「球状タンパク質 globular protein」「繊維状タンパク質 fibrous protein」「天然変性タンパク質 disordered protein」「膜タンパク質 membrane protein」の4種があるそうです.何でも19世紀に遡る分類法だそうで.

Wikipedia: Globular protein

このうち「球状タンパク質 globular protein」はさらに「グロビン globin」「アルブミン albumin」「アルファグロブリン alpha globulin」「ベータグロブリン beta globulin」「ガンマグロブリン gamma globulin」に分類されます.

「グロブリン globulin」の名称は上位の「球状タンパク質 globular protein」からの派生のようですね.

19世紀~20世紀初頭の化学研究は電気泳動などが主流だったようです.

ヒトの血清を電気泳動したところ,ある程度のかたまりがいくつか観察されたので,ギリシャ文字を使って命名したんですね.

Electrophoresis.png

なおこの時代の電気泳動技術では,分子量に従った分別はできなかったようです.つまりアルファ~ガンマは分子量(重さ)順ではありませんし,現代の科学技術では各グロブリンの中に種々の異なるタンパク質が混ざり合っていることがわかっています.

そして次項で解説するとおり,ガンマグロブリンが免疫(抗体反応)に強く関わっていることが20世紀の研究で明らかとなりました.

タンパク質 球状タンパク質
globular protein
グロビン
globin
アルブミン
albumin
アルファグロブリン
alpha globulin
ベータグロブリン
beta globulin
ガンマグロブリン
gamma globulin
繊維状タンパク質
fibrous protein
天然変性タンパク質
disordered protein
膜タンパク質
membrane protein
  • タンパク質 protein
    • 球状タンパク質 globular protein
    • 繊維状タンパク質 fibrous protein
    • 天然変性タンパク質 disordered protein」「膜タンパク質 membrane protein」

分子としての免疫グロブリン immunoglobulin

免疫グロブリンは下記の構造をしています.

Antibody basic unit.svg

左右対称の構造には,H鎖 heavy chain(図の青色黄色) と L鎖 light chain(図の緑色赤色)があります.より長く分子量がより大きい(重い heavy)H鎖は,左右一対で「Y」の字のような形を作っています.より短く分子量がより小さい(軽い light)L鎖は,「Y」の上側を挟むように付いています.

可変領域 variable domain,定常領域 constant region,抗原結合部位 antigen-binding region

H鎖とL鎖それぞれの先端は,抗原(のエピトープ)の形に応じて分子構造がダイナミックに変化する領域であり,「可変領域 variable domain」と呼びます(図の「VH」および「VL」).

可変領域以外のH鎖およびL鎖を「定常領域 constant domain」と呼びます.

VHとVLが組み合わさった箇所で抗原(のエピトープ)に結合します.これを「抗原結合部位 antigen-binding region」と呼びます.

H鎖のアイソタイプ isotype

H鎖の分子構造にはアイソタイプ(同形)が5種類あることがわかっています.5種類のアイソタイプは下記のとおり命名されています.

H鎖のアイソタイプ
γ ガンマ
α アルファ
μ ミュー
δ デルタ
ε エプシロン

ギリシャ文字のアルファベットは「α,β,γ,δ,ε,ζ,……」で,「μ」は12番目です.

5種類がなぜこのような命名なのか,もしアルファベット順ならなぜβがなくて飛び番(?)のμが含まれているのか?

それは次のサブクラスの項で説明しましょう.

免疫グロブリンのサブクラス

上記5つのH鎖アイソタイプに従って,免疫グロブリンもまた5つのサブクラスに分類されています.

H鎖のアイソタイプ 免疫グロブリンのサブクラス
γ ガンマ IgG
α アルファ IgA
μ ミュー IgM
δ デルタ IgD
ε エプシロン IgE


こちらの論文によると,

Black CA. A brief history of the discovery of the immunoglobulins and the origin of the modern immunoglobulin nomenclature. 1997;(July 1996):65-69. doi:10.1038/icb.1997.10

,種々教科書等を調べましたが不明でした.命名理由が判明し次第追記します.

免疫グロブリンのクラス

グロブリン globulin

ガンマグロブリン,γグロブリン gamma globulin

免疫グロブリン immunoglobulin

臨床検査としての抗体

用語

  • 中和抗体 neutralizing antibody
  • 中和抗体価 neutralizing antibody titer
  • 中和反応 neutralization reaction
  • 中和試験 neutralization test
  • 中和アッセイ neutralization assay

中和抗体

中和抗体は単一の抗体か?複数種の抗体か?

ウイルスの定量:プラーク法

1プラークは1ウイルス粒子だけで成り立っているのか?

中和抗体の定量:中和試験

幾何平均抗体価 geometric mean titer (GMT)