コロナワクチン mRNAワクチン-治験

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新型コロナワクチン総目次
総論
コロナワクチン_開発と承認の状況
コロナワクチン_ワクチンの製法
コロナワクチン_ウイルス遺伝子の接種に理論的危険性はない
コロナワクチン_抗体依存性感染増強(ADE)について
コロナワクチン_社会的配慮について
コロナワクチン_リンク集
治験+承認後研究
コロナワクチン_ワクチンの効果 Vaccine Efficacy とは
コロナワクチン_mRNAワクチン-治験
コロナワクチン_mRNAワクチン-承認後研究
コロナワクチン_mRNAワクチン-アナフィラキシー
コロナワクチン_ウイルスベクターワクチン-治験
コロナワクチン_ウイルスベクターワクチン-承認後研究
コロナワクチン_今わかっていること,まだわからないこと
接種の実際
コロナワクチン_日本の法令上の根拠
コロナワクチン_日本での接種体制
コロナワクチン_三角筋への筋注手技
コロナワクチン_人口集団別の接種可否の考え方
コロナワクチン_高齢者
コロナワクチン_妊婦
コロナワクチン_挙児希望女性
コロナワクチン_授乳婦および授乳児
コロナワクチン_小児
コロナワクチン_アナフィラキシー既往
コロナワクチン_免疫低下状態・悪性腫瘍患者
コロナワクチン_出血傾向患者
コロナワクチン_新型コロナ既感染者
コロナワクチン_接種スケジュールの遵守
コロナワクチン_異なるワクチン製剤間の互換性
コロナワクチン_他のワクチンとの接種間隔

更新履歴

日付 更新内容
2021年1月19日 一般公開

mRNAワクチン2製剤

mRNAワクチンはPfizer/BiONTech社製(日本名「コミナティ筋注」)とModerna社製の2製剤があります.

mRNAワクチンがヒト用に実用化されたのはこれら2製剤が史上初めてです.

本ページではmRNAワクチン2製剤の治験を対比しながら解説します.

それぞれの治験の phase 3 論文は下記です.

ワクチン 引用 初出日
Pfizer
コミナティ筋注
Polack, Fernando P., Stephen J. Thomas, Nicholas Kitchin, Judith Absalon, Alejandra Gurtman, Stephen Lockhart, John L. Perez, et al. “Safety and Efficacy of the BNT162b2 MRNA Covid-19 Vaccine.” New England Journal of Medicine 383, no. 27 (December 31, 2020): 2603–15. https://doi.org/10.1056/nejmoa2034577. 2020年12月10日
Moderna Baden, Lindsey R., Hana M. El Sahly, Brandon Essink, Karen Kotloff, Sharon Frey, Rick Novak, David Diemert, et al. “Efficacy and Safety of the MRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine.” New England Journal of Medicine, December 30, 2020. https://doi.org/10.1056/nejmoa2035389. 2020年12月30日

mRNAワクチン治験かんたんまとめ

2製剤の治験論文の主要なところを整理します.

Pfizer
コミナティ
Moderna
参加者
  • 16-89歳(中央値52歳)
  • 妊婦,小児は対象外
  • 18-95歳(平均値51.4歳)
  • 妊婦,小児は対象外
投与法
  • 実薬:30μg/0.3mL
  • プラセボ:生理食塩水
  • 2回接種;21日間隔
  • 筋注(三角筋)
  • 実薬:100μg/0.5mL
  • プラセボ:生理食塩水
  • 2回接種;28日間隔
  • 筋注(三角筋)
COVID発症の予防効果

2回目接種7日後以降のCOVID発症

実薬群 プラセボ群
8人
2,214人年
162人
2,222人年
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
95.0% (90.3-97.6)

2回目接種14日後以降のCOVID発症

実薬群 プラセボ群
3.3人
1,000人年
56.5人
1,000人年
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
94.1% (89.3-96.8)
重症COVIDの予防効果

接種後時期を問わない重症COVID

実薬群 プラセボ群
1人
4,021人年
9人
4,006人年
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
88.9% (20.1-99.7)

2回目接種14日後以降の重症COVID

実薬群 プラセボ群
0人
14,073人
30人
14,073人
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
100% (算出不能-100)
有害事象
  • ワクチン反応性症状はいずれも実薬群で多い
  • その他の重篤有害事象は死亡含めて両群間に明らかな偏りはない
  • ワクチン反応性症状はいずれも実薬群で多い
  • その他の重篤有害事象は死亡含めて両群間に明らかな偏りはない

一見してわかるとおり,両ワクチンの治験は非常に似通った結果となっています.

かつ,2回目接種直後(7日or14日後以降)のCOVID発症予防について,vaccine efficacy, VE は95%前後と極めて優れた結果を示しました.

加えて,重症COVIDについても約90%超の VE を示し,少なくとも治験期間中の観察においては,抗体依存性感染増強 ADEの懸念を跳ね返しました.

有害事象については,両ワクチンとも「ワクチンとして当然予想される接種部位疼痛や発熱などの反応性症状」が実薬群で多く観察されたのみで,ワクチン関連が疑われて注意を要する重篤有害事象はほぼありませんでした.

一言で言えば,「効果が期待できて,重篤または接種をためらう有害事象が観察されないワクチンを,よくぞこの短期間で実用化までこぎつけたものだ」と感嘆するレベルです.

以下,より詳細に検討します.

mRNAワクチン治験:対象者

Pfizer
コミナティ
Modernaワクチン
年齢
  • 16-89歳(中央値52歳)
  • 55歳以上が42.3%
  • 18-95歳(平均値51.4歳)
  • 65歳以上が24.8%
背景
  • 基礎疾患ありが20.9%
    • HIV,B型肝炎,C型肝炎の各感染者を含む
  • 女性が48.9%
  • 白人が82.9%

など

  • 重症化リスクありが22.5%
  • 女性が47.4%
  • 白人が79.5%
  • 登録時スクリーニングでCOVID-19既感染が2.2%

など

除外基準
  • 妊婦は除外
  • COVID-19既感染は除外
  • 免疫抑制状態は除外
  • 妊婦は除外
  • HIV,B型肝炎,C型肝炎の各感染者は除外
対象人数

Per protocol解析対象:

  • 実薬群 18,198人
  • プラセボ群 18,325人

Per protocol解析対象:

  • 実薬群 14,134人
  • プラセボ群 14,037人

mRNAワクチン治験:投与方法

Pfizer
コミナティ
Modernaワクチン
実薬
  • 含有量 30μg/0.3mL
  • 含有量 100μg/0.5mL
プラセボ
  • 生理食塩水
  • 生理食塩水
接種スケジュール
  • 2回接種
  • 21日間隔
  • 2回接種
  • 28日間隔
投与経路
  • 筋注(三角筋)
  • 筋注(三角筋)

mRNAワクチン治験:効果(エンドポイント)と有害事象の検証方法

以下の表ではすべて「実薬群ではプラセボ群に比べて」を省略しています

Pfizer
コミナティ
Moderna
一次エンドポイント
  • 2回目接種の7日後以降の時点で,COVIDの既往がない者での,COVIDの発症が減少するか?
  • 2回目接種の14日後以降の時点で,COVIDの既往がない者での,COVIDの発症が減少するか?
二次エンドポイント
  • 各接種後の時期を問わず,COVIDの重症化が減少する,又は増加するか?
  • COVIDの重症化が減少する,又は増加するか?
    • Methods欄には観察時期の言及はないが,Resultsを読むと「2回目接種の14日後以降」の重症COVIDを評価していることがわかる
予想される有害事象
  • 各接種後の7日以内に,事前予想されるワクチン反応性症状が増加するか?
  • 各接種後の7日以内に,事前予想されるワクチン反応性症状が増加するか?
その他の有害事象
  • 2回目接種の1ヶ月以内に,反応性症状以外の有害事象が増加するか?
  • 2回目接種の6ヶ月以内に,反応性症状以外の重篤な有害事象が増加するか?
  • 2回目接種の28日以内に,反応性症状以外の有害事象が増加するか?
  • 1回目接種の759日(2年1ヶ月)以内に,反応性症状以外の重篤な有害事象が増加するか?
  • 治験からの脱落につながる有害事象が増加するか?

mRNAワクチン治験:効果 Vaccine Efficacy

下表において「平均追跡期間」はいずれも論文中にはありません.論文中に記載された人年/人日と解析対象人数/at risk人数から,サイト管理者が逆算したものです.

両ワクチンも「2回目の7/14日後以降」という極めて短期間でエンドポイントを見ているため,予防効果がどれぐらいの期間続くのか予想できません.せめて2回目接種からCOVID発症までの平均追跡期間を見ることで,「60%や95%というVEが保たれるのは平均で少なくともどのぐらいの期間か」を考えることができます.

もちろん,両論文ともKaplan-Meier法による累積発症グラフを掲載しており,そちらの方が視覚的にわかりやすいです.是非ご参照ください.著作権の関係でグラフを本ページに転載することができないため,代わりに平均追跡期間を計算した次第です.参考程度にお考えください.

Pfizer
コミナティ
Moderna
一次エンドポイント

2回目7日後以降のCOVID発症

実薬群 プラセボ群
8人
2,214人年
162人
2,222人年
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
95.0% (90.3-97.6)
実薬群 at risk 人口 プラセボ群 at risk 人口
17,411人
平均追跡期間 46.4日
17,511人
平均追跡期間 46.3日

2回目14日後以降のCOVID発症

実薬群 プラセボ群
3.3人
1,000人年
56.5人
1,000人年
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
94.1% (89.3-96.8)
実薬群解析対象 プラセボ群解析対象
14,134人
平均追跡期間 86.1日
14,073人
平均追跡期間 84.9日
二次エンドポイント

接種後時期を問わない重症COVIDの減少又は増加

実薬群 プラセボ群
1人
4,021人年
9人
4,006人年
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
88.9% (20.1-99.7)
実薬群at risk人口 プラセボ群at risk人口
21,314人
平均追跡期間 68.9日
21,259人
平均追跡期間 68.8日

2回目14日後以降の重症COVIDの減少又は増加

実薬群 プラセボ群
0人
14,073人
30人
14,073人
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
100% (算出不能-100)

mRNAワクチン治験:有害事象

PfizerとModernaを比較すると,Modernaの方がワクチン反応性症状がかなり多く出ている傾向があります.

しかし,被験者からの報告方法,症状の登録方法などが両治験で同一ではないため,集計上の見かけの数字に差があるのは自然なことです.

また,mRNAとしての抗原量はPfizerで1回あたり30μg,Modernaで100μgとなっています.両者の抗原の分子量の測定法の差異までは私は確認できていないのですが,数字を額面どおり受け取るならばModernaの方が抗原量が多い可能性があります.もしそうならば,ワクチン反応性症状がModernaで多くなった理由になるかもしれません.

いずれにせよ,両者の違いの詳細については,プロトコル論文やphase 1論文を別途精読する必要があります.

Pfizer
コミナティ
Moderna
予想される有害事象

各接種7日後以内のワクチン反応性症状

実薬群% プラセボ群%
接種部疼痛 66-83 8-14
発赤 5-7 1
腫脹 6-7 0-1
腋窩腫脹 調査せず
発熱 1-16 0-1
倦怠感 34-59 17-33
頭痛 25-52 14-34
悪寒 6-35 3-6
嘔吐 0-2 0-1
下痢 8-11 6-12
筋肉痛 14-37 5-11
関節痛 9-22 4-6
解熱剤使用 20-45 10-14

各接種7日後以内のワクチン反応性症状

実薬群% プラセボ群%
接種部疼痛 83.4-88.2 17.0-17.5
発赤 2.8-8.6 0.4
腫脹 6.1-12.2 0.3
腋窩腫脹 10.2-14.2 3.9-4.8
発熱 0.8-15.5 0.3
倦怠感 37.2-65.3 23.4-27.3
頭痛 32.7-58.6 23.4-26.6
悪寒 8.3-44.2 5.6-5.8
嘔気嘔吐 8.3-19.0 6.4-7.1
下痢 調査せず
筋肉痛 22.7-58.0 12.4-13.7
関節痛 16.6-42.8 10.8-11.8
解熱剤使用 調査せず
その他の有害事象

2回目1ヶ月以内の有害事象・6ヶ月以内の重篤有害事象

実薬群
人 (%)
プラセボ群
人 (%)
重篤serious有害事象 126 (0.6) 111 (0.5)
└うち重症severe 71 (0.3) 68 (0.3)
└うち致命的 21 (0.1) 23 (0.1)
└うち関連あり 4 (0.0) 0
脱落に至った有害事象 37 (0.2) 30 (0.1)
└うち重症severe 13 (0.1) 9 (0.0)
└うち致命的 3 (0.0) 6 (0.0)
└うち関連あり 16 (0.1) 9 (0.0)
死亡 2 (0.0) 4 (0.0)
  • 論文では2回目接種後約14週までの有害事象を観察
  • 実薬群死亡の死因は,動脈硬化(※詳細不明),心停止
  • プラセボ群死亡の死因は,死因不詳×2,脳出血,心筋梗塞

2回目28日以内の有害事象

実薬群
人 (%)
プラセボ群
人 (%)
関連を問わない有害事象 3632 (23.9) 3277 (21.6)
└うち受診あり 1372 (9.0) 1465 (9.7)
└うち重症severe 234 (1.5) 202 (1.3)
└うち重篤serious 93 (0.6) 89 (0.6)
└うち死亡 3 (<0.1) 2 (<0.1)
└うち脱落 50 (0.3) 80 (0.5)
関連ある有害事象 1242 (8.2) 686 (4.5)
└うち受診あり 140 (0.9) 83 (0.5)
└うち重症severe 71 (0.5) 28 (0.2)
└うち重篤serious 6 (<0.1) 4 (<0.1)
└うち死亡 0 0
└うち脱落 18 (0.1) 15 (<0.1)
  • 実薬群死亡の死因は,心肺停止,自殺
  • プラセボ群死亡の死因は,腹腔内穿孔,心肺停止,慢性リンパ性白血病参加者での重症全身性炎症症候群

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