「コロナワクチン mRNAワクチン-治験」の版間の差分

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加えて,重症COVIDについても約90%超の VE を示し,少なくとも治験期間中の観察においては,[[#コロナワクチン_ADE 抗体依存性感染増強について|抗体依存性感染増強 ADE]]の懸念を跳ね返しました.
 
加えて,重症COVIDについても約90%超の VE を示し,少なくとも治験期間中の観察においては,[[#コロナワクチン_ADE 抗体依存性感染増強について|抗体依存性感染増強 ADE]]の懸念を跳ね返しました.
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有害事象については,両ワクチンとも「ワクチンとして当然予想される接種部位疼痛や発熱などの反応性症状」が実薬群で多く観察されたのみで,ワクチン関連が疑われて注意を要する重篤有害事象はほぼありませんでした.
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一言で言えば,「効果が期待できて,重篤または接種をためらう有害事象が観察されないワクチンを,よくぞこの短期間で実用化までこぎつけたものだ」と感嘆するレベルです.

2021年3月26日 (金) 22:52時点における版

新型コロナワクチン総目次
総論
コロナワクチン_開発と承認の状況
コロナワクチン_ワクチンの製法
コロナワクチン_ウイルス遺伝子の接種に理論的危険性はない
コロナワクチン_抗体依存性感染増強(ADE)について
コロナワクチン_社会的配慮について
コロナワクチン_リンク集
治験+承認後研究
コロナワクチン_ワクチンの効果 Vaccine Efficacy とは
コロナワクチン_mRNAワクチン-治験
コロナワクチン_mRNAワクチン-承認後研究
コロナワクチン_mRNAワクチン-アナフィラキシー
コロナワクチン_ウイルスベクターワクチン-治験
コロナワクチン_ウイルスベクターワクチン-承認後研究
コロナワクチン_今わかっていること,まだわからないこと
接種の実際
コロナワクチン_日本の法令上の根拠
コロナワクチン_日本での接種体制
コロナワクチン_三角筋への筋注手技
コロナワクチン_人口集団別の接種可否の考え方
コロナワクチン_高齢者
コロナワクチン_妊婦
コロナワクチン_挙児希望女性
コロナワクチン_授乳婦および授乳児
コロナワクチン_小児
コロナワクチン_アナフィラキシー既往
コロナワクチン_免疫低下状態・悪性腫瘍患者
コロナワクチン_出血傾向患者
コロナワクチン_新型コロナ既感染者
コロナワクチン_接種スケジュールの遵守
コロナワクチン_異なるワクチン製剤間の互換性
コロナワクチン_他のワクチンとの接種間隔

更新履歴

日付 更新内容
2021年1月19日 一般公開

mRNAワクチン2製剤

mRNAワクチンはPfizer/BiONTech社製(日本名「コミナティ筋注」)とModerna社製の2製剤があります.

mRNAワクチンがヒト用に実用化されたのはこれら2製剤が史上初めてです.

本ページではmRNAワクチン2製剤の治験を対比しながら解説します.

それぞれの治験の phase 3 論文は下記です.

ワクチン 引用 初出日
Pfizer
コミナティ筋注
Polack, Fernando P., Stephen J. Thomas, Nicholas Kitchin, Judith Absalon, Alejandra Gurtman, Stephen Lockhart, John L. Perez, et al. “Safety and Efficacy of the BNT162b2 MRNA Covid-19 Vaccine.” New England Journal of Medicine 383, no. 27 (December 31, 2020): 2603–15. https://doi.org/10.1056/nejmoa2034577. 2020年12月10日
Moderna Baden, Lindsey R., Hana M. El Sahly, Brandon Essink, Karen Kotloff, Sharon Frey, Rick Novak, David Diemert, et al. “Efficacy and Safety of the MRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine.” New England Journal of Medicine, December 30, 2020. https://doi.org/10.1056/nejmoa2035389. 2020年12月30日

mRNAワクチン治験かんたんまとめ

2製剤の治験論文の主要なところを整理します.

Pfizer
コミナティ
Moderna
参加者
  • 16-89歳(中央値52歳)
  • 妊婦,小児は対象外
  • 18-95歳(平均値51.4歳)
  • 妊婦,小児は対象外
投与法
  • 実薬:30μg/0.3mL
  • プラセボ:生理食塩水
  • 2回接種;21日間隔
  • 筋注(三角筋)
  • 実薬:100μg/0.5mL
  • プラセボ:生理食塩水
  • 2回接種;28日間隔
  • 筋注(三角筋)
COVID発症の予防効果

2回目接種7日後以降のCOVID発症

実薬群 プラセボ群
8人
2,214人年
162人
2,222人年
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
95.0% (90.3-97.6)

2回目接種14日後以降のCOVID発症

実薬群 プラセボ群
3.3人
1,000人年
56.5人
1,000人年
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
94.1% (89.3-96.8)
重症COVIDの予防効果

接種後時期を問わない重症COVID

実薬群 プラセボ群
1人
4,021人年
9人
4,006人年
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
88.9% (20.1-99.7)

2回目接種14日後以降の重症COVID

実薬群 プラセボ群
0人
14,073人
30人
14,073人
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
100% (算出不能-100)
有害事象
  • ワクチン反応性症状はいずれも実薬群で多い
  • その他の重篤有害事象は死亡含めて両群間に明らかな偏りはない
  • ワクチン反応性症状はいずれも実薬群で多い
  • その他の重篤有害事象は死亡含めて両群間に明らかな偏りはない

一見してわかるとおり,両ワクチンの治験は非常に似通った結果となっています.

かつ,2回目接種直後(7日or14日後以降)のCOVID発症予防について,vaccine efficacy, VE は95%前後と極めて優れた結果を示しました.

加えて,重症COVIDについても約90%超の VE を示し,少なくとも治験期間中の観察においては,抗体依存性感染増強 ADEの懸念を跳ね返しました.

有害事象については,両ワクチンとも「ワクチンとして当然予想される接種部位疼痛や発熱などの反応性症状」が実薬群で多く観察されたのみで,ワクチン関連が疑われて注意を要する重篤有害事象はほぼありませんでした.

一言で言えば,「効果が期待できて,重篤または接種をためらう有害事象が観察されないワクチンを,よくぞこの短期間で実用化までこぎつけたものだ」と感嘆するレベルです.