「コロナワクチン 妊婦」の版間の差分
Vaccipedia.admin (トーク | 投稿記録) |
Vaccipedia.admin (トーク | 投稿記録) |
||
21行目: | 21行目: | ||
===妊婦の接種の安全性を検証する研究が進行中=== | ===妊婦の接種の安全性を検証する研究が進行中=== | ||
COVIDワクチンの妊娠への影響を検証する研究をハーバード大学等が進めていますが,2021年3月現在ではまだ最終結果が発表されていません. | COVIDワクチンの妊娠への影響を検証する研究をハーバード大学等が進めていますが,2021年3月現在ではまだ最終結果が発表されていません. | ||
− | {{Quote|content=[https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04705116 | + | {{Quote|content=[https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04705116 【NCT04705116】COVID-19 Vaccines International Pregnancy Exposure Registry (C-VIPER)]}} |
==妊婦に積極的に接種するワクチンがある== | ==妊婦に積極的に接種するワクチンがある== |
2021年3月27日 (土) 08:46時点における版
総論 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
|
治験+承認後研究 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
|
目次
更新履歴
日付 | 更新内容 |
---|---|
2021年3月26日 | 一部追記 |
2021年2月16日 | 一般公開 |
妊婦は初期治験では除外
本項では「妊娠中」の女性について論じます.「妊娠前」の女性については挙児希望女性の項を参照してください.
3ワクチンとも治験では妊婦は除外しています.したがって妊婦における効果と安全性は全く検証されていません.
そもそもどんなワクチンでも,最初の開発段階で妊婦を治験に組み入れることはしません.倫理面のハードルが高すぎますし,実際に充分数の妊婦を登録することも困難です.
妊婦の接種の安全性を検証する研究が進行中
COVIDワクチンの妊娠への影響を検証する研究をハーバード大学等が進めていますが,2021年3月現在ではまだ最終結果が発表されていません.
【NCT04705116】COVID-19 Vaccines International Pregnancy Exposure Registry (C-VIPER) |
妊婦に積極的に接種するワクチンがある
一方で,認可後(市販後)に妊婦に接種されるようになったワクチンは複数あります.
百日咳ワクチン,不活化インフルエンザワクチンはその典型です.
百日咳ワクチンの妊婦接種
百日咳ワクチンは,妊婦に接種することで母胎内に抗体が産生され,経胎盤的に胎児に移行することで出生直後の新生児を百日咳から守ります.百日咳ワクチンは生後2ヶ月以降にしか接種できないため,百日咳が流行する環境では新生児百日咳死亡の予防には妊婦への接種が有効なのです.
|
インフルエンザワクチンの妊婦接種
- 妊婦が季節性インフルエンザに罹患すると,非妊婦に比べて重症化(入院)率や死亡率が増加することが以前から知られています.妊婦自身を守るために,不活化インフルエンザワクチンの接種が推奨されます.
妊婦へのワクチン接種の原則
妊婦とワクチンについての原則は,生ワクチンと非生ワクチン(不活化など)で異なります.
- 生ワクチンは,胎児への理論的なワクチン株感染リスクと感染による先天異常や妊娠合併症のリスクがあるため,妊婦には接種禁忌
- 非生ワクチン(不活化など)は,抗原のみが母胎内を循環するため理論的には胎児への障害は考えにくく,接種による利益が有害事象のリスクを上回るならば接種可
妊婦への新型コロナウイルスワクチン接種の原則
ではCOVIDではどう考えるべきか.
COVIDに感染した妊婦は非妊婦に比べて重症化しやすい可能性が指摘されています.
そして3ワクチンのうち,PfizerおよびModernaのmRNAワクチンは純然たる非生ワクチンです.核酸の断片(mRNA)を接種し,それが細胞質内で抗原タンパクを産生するのみです.
- 接種する物質がmRNAであるという点に漠然とした不安を覚えるかもしれません.それについてはこちらのまとめ「コロナワクチン_ワクチン遺伝子の接種に理論的危険性はない」を参照してください.
すると,mRNAワクチンが妊婦のCOVID感染および重症化を予防し,未知の有害事象(接種による妊娠合併症や先天異常等の増加も含む)のリスクも上回ると判断するならば,個別の判断で接種を検討してもよいことになります.
- 一方で,AstraZenecaワクチンはウイルスベクターワクチンであるため,投与時点では「活きたベクターウイルス」が体内を循環します.組み込まれた遺伝子だけが細胞質内で抗原タンパクを産生するという点では非生ワクチンと言えるでしょうが,妊娠の観点からは「活きたウイルス」であることに注目すべきかもしれません.ベクターウイルスとして使われているチンパンジーアデノウイルスはヒトへの病原性を持たないとはいえ,胎児への影響もないと証明したエビデンスは現時点ではありません.
しかし問題は,Pfizer/Modernaワクチンが妊婦のCOVID感染および重症化を予防するかどうかは検証されていないことです.
効果が未検証,有害事象も未検証の現状で,COVID重症化のおそれがある妊婦への接種は,禁忌とも推奨とも簡単に決められないのです.
そのため,日本を含む各国で判断がわかれています.
妊娠特有の紛れ込みに特に注意を
また,そもそも妊娠では,特定の原因がない流死産,早産,その他妊娠合併症および児の先天異常などが,一定の確率で発生します.
COVIDワクチンの接種後にそれらが生じた場合,個別の症例については接種との因果関係を肯定することも否定することも困難です.しかし,当事者の妊婦や家族親族は接種が原因でそうなったと結び付けてしまうことが大いに予想されます.
妊婦に接種する場合は,そうした心理的負担まで充分に説明し,妊婦だけでなく広く家族親族が充分に納得した上で接種可否を決定することが大切でしょう.
2021年2月8日付でJAMA誌に,妊婦および授乳婦へのCOVIDワクチン接種を論じた意見が投稿されました.
基本的に本ページと同様のスタンスで論じています.ご参照ください.
妊婦:日本での指針
厚生労働省は2021年1月31日現在,「新型コロナワクチンのお知らせ」において,「妊婦を優先するかどうか(中略)は、安全性や有効性の情報などを見ながら検討されます」と言及しています.
すなわち,日本では現時点では妊婦は「優先接種対象」には含まれていません.「優先接種対象」に含んでいないということは,優先ではない接種対象に含む可能性をまだ残していると解釈できます.また,下記のとおり,2021年2月14日付で日本で承認されたPfizerワクチン「コミナティ筋注」の添付文書では,「予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種」とされており,絶対禁忌にはなっていません.
それに対して,2021年1月25日付で日本産婦人科感染症学会が次のような声明を出しています.
提言部分を以下に転記します.
- COVID-19 ワクチンは、現時点で妊婦に対する安全性、特に中・長期的な副反応、胎児および出生児への安全性は確立していない。
- 流行拡大の現状を踏まえて、妊婦をワクチン接種対象から除外することはしない。接種する場合には、長期的な副反応は不明で、胎児および出生児への安全性は確立していないことを接種前に十分に説明する。同意を得た上で接種し、その後30分は院内での経過観察が必要である。器官形成期(妊娠12週まで)は、ワクチン接種を避ける。母児管理のできる産婦人科施設等で接種を受け、なるべく接種前と後にエコー検査などで胎児心拍を確認する。
- 感染リスクが高い医療従事者、重症化リスクがある可能性がある肥満や糖尿病など基礎疾患を合併している方は、ワクチン接種を考慮する。
- 妊婦のパートナーは、家庭での感染を防ぐために、ワクチン接種を考慮する。
- 妊娠を希望される女性は、可能であれば妊娠する前に接種を受けるようにする。(生ワクチンではないので、接種後長期の避妊は必要ない。)
- 患者さん一人一人の背景が違いますので、まずは産婦人科の主治医と十分にご相談ください。
すなわち日本産婦人科感染症学会は,
- 妊婦を接種対象から除外せず,
- COVID感染リスクが高い妊婦(医療従事者,肥満,糖尿病など)で接種を考慮し,
- 接種する場合は,母児管理が可能な施設において,充分に説明した上で行うこと
を提唱しています.
「母児管理が可能な施設で行う」ことの必要性は,ひとつにはアナフィラキシーを想定してのことと思われます.接種した妊婦がアナフィラキシーを起こした場合,血圧低下が生じればバイタル臓器への血流が優先的に維持されるために子宮血流は保証されません.すなわち母胎だけでなく胎児にも危険が及びます.そうしたリスクまで考えての言及と思われます.
妊婦:承認済みワクチンの添付文書記載
開発元 | 日本での製品名 | 添付文書の記載 |
---|---|---|
Pfizer | コミナティ筋注 | 9.5 妊婦
|
妊婦:各国での指針
以下に各国政府等の指針をまとめます.
米国 | 医療従事者などの接種推奨対象である妊婦は,周囲の流行状況,本人の感染リスク,ワクチンの効果,未知の有害事象リスク等について本人と接種医が充分に検討した上で,mRNAワクチンの接種を選択してもよい |
---|---|
英国 | AstraZenecaワクチンのベクターウイルスは増殖能を失活させてあるため理論的には妊婦にも胎児にも感染せず,同じくウイルスベクターワクチンであるエボラワクチンは広く女性に接種されてきたが妊娠への影響は報告されていないが,COVIDワクチンは妊婦には積極的には推奨しない.感染リスクが高い妊婦,合併症がある妊婦では接種を検討すべきである.接種後に妊娠が判明した場合は中絶は推奨せず,完遂することを勧告する(PDF13ページ)(こちらも参照) |
カナダ | 妊婦のリスクアセスメントの結果,接種による利益が未知の有害事象のリスクを上回ると判断した場合は,効果と安全性は検証されていないことも含めた充分なインフォームドコンセントの下で接種してもよい.接種後に妊娠が判明した妊婦はそれを理由に中絶を勧めてはいけない.1回目接種後に妊娠が判明した妊婦は,2回目接種完遂による利益が未知の有害事象を上回ると判断しない限りは,2回目接種は妊娠完了後に延期してもよい |
オーストラリア | 妊婦へのPfizerワクチンの接種について専門家グループが検討中であり,近日中に発表する予定(2021年2月2日閲覧時点) |
シンガポール | 妊婦への接種は推奨しない |
ノルウェー | 妊婦への接種について言及なし |
スウェーデン | 妊婦への接種は行わない |
イスラエル | 妊婦への接種は可能(※妊婦への接種の詳細な声明はヘブライ語のみ提供)
|