「コロナワクチン ウイルスベクターワクチン-治験」の版間の差分

提供: Vaccipedia | Resources for Vaccines, Tropical medicine and Travel medicine
ナビゲーションに移動 検索に移動
65行目: 65行目:
 
Sputnik Vがまだ2回接種後の full analysis を発表しておらず,Johnson&Johnsonも論文化されていないことから,本ページではAstraZeneca(Oxfordワクチン)の治験 phase 3 についてのみ記述します.
 
Sputnik Vがまだ2回接種後の full analysis を発表しておらず,Johnson&Johnsonも論文化されていないことから,本ページではAstraZeneca(Oxfordワクチン)の治験 phase 3 についてのみ記述します.
  
{|class="wikitable"
+
{|class="wikitable" style="max-width:500px;"
 
|-
 
|-
 
!
 
!

2021年3月27日 (土) 00:49時点における版

新型コロナワクチン総目次
総論
コロナワクチン_開発と承認の状況
コロナワクチン_ワクチンの製法
コロナワクチン_ウイルス遺伝子の接種に理論的危険性はない
コロナワクチン_抗体依存性感染増強(ADE)について
コロナワクチン_社会的配慮について
コロナワクチン_リンク集
治験+承認後研究
コロナワクチン_ワクチンの効果 Vaccine Efficacy とは
コロナワクチン_mRNAワクチン-治験
コロナワクチン_mRNAワクチン-承認後研究
コロナワクチン_mRNAワクチン-アナフィラキシー
コロナワクチン_ウイルスベクターワクチン-治験
コロナワクチン_ウイルスベクターワクチン-承認後研究
コロナワクチン_今わかっていること,まだわからないこと
接種の実際
コロナワクチン_日本の法令上の根拠
コロナワクチン_日本での接種体制
コロナワクチン_三角筋への筋注手技
コロナワクチン_人口集団別の接種可否の考え方
コロナワクチン_高齢者
コロナワクチン_妊婦
コロナワクチン_挙児希望女性
コロナワクチン_授乳婦および授乳児
コロナワクチン_小児
コロナワクチン_アナフィラキシー既往
コロナワクチン_免疫低下状態・悪性腫瘍患者
コロナワクチン_出血傾向患者
コロナワクチン_新型コロナ既感染者
コロナワクチン_接種スケジュールの遵守
コロナワクチン_異なるワクチン製剤間の互換性
コロナワクチン_他のワクチンとの接種間隔

更新履歴

日付 更新内容
2021年3月26日 SputnikおよびJohnson&Johnsonワクチンを追記
2021年1月19日 一般公開

ウイルスベクターワクチン3製剤

ウイルスベクターワクチンはAstraZeneca(英国での通称:Oxfordワクチン)に加え,ロシアのSputnik(Спутник)および米国のJohnson&Johnson社製ワクチンがそれぞれ開発国で承認されています.

このうち phase 3 結果がpeer-reviewed論文として掲載されているのは2021年3月26日現在 AstraZeneca のみです.

Sputnikは phase 3 のinterim analysis(2回接種のうち1回目接種後の一時的な予防効果)のみが掲載され,Johnson&Johnsonは未だプレスリリースのみです.

ワクチン 引用 初出日
AstraZeneca Voysey M, Clemens SAC, Madhi SA, et al. Safety and efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine (AZD1222) against SARS-CoV-2: an interim analysis of four randomised controlled trials in Brazil, South Africa, and the UK. Lancet. 2021;397(10269):99-111. doi:10.1016/S0140-6736(20)32661-1 2020年12月8日
Sputnik V Logunov DY, Dolzhikova I V, Shcheblyakov D V, et al. Safety and efficacy of an rAd26 and rAd5 vector-based heterologous prime-boost COVID-19 vaccine: an interim analysis of a randomised controlled phase 3 trial in Russia. Lancet. 2021;397(10275):671-681. doi:10.1016/s0140-6736(21)00234-8 2021年2月20日
Johnson&Johnson Press Release: Johnson & Johnson COVID-19 Vaccine Authorized by U.S. FDA For Emergency Use - First Single-Shot Vaccine in Fight Against Global Pandemic 2021年2月27日

ウイルスベクターワクチンのヒト初実用化はエボラワクチン

致死率が50%を超える極めて病原性の強い出血熱ウイルス,エボラウイルス.

特に,2013年から始まった西アフリカでの大流行ではアフリカ大陸から全世界へと広がるのではと人類は脅威に晒されました.

しかしその西アフリカ大流行をきっかけに開発されたエボラワクチンは,後に極めて高い効果が証明されました.

このエボラワクチン rVSVΔG-ZEBOV はウイルスベクターワクチンです.世界で初めてヒトに実用化されたウイルスベクターワクチンは,エボラワクチンだったのです.
新型コロナワクチンがヒト実用化2例目にあたります.

エボラワクチンの開発

エボラウイルスの発見が1976年,ワクチン開発が動物実験レベルで始まったのは2005年でした.前述のとおりウイルスベクターワクチンで,rVSV-ZEBOVワクチン(rVSVΔG-ZEBOVとも)と呼ばれました.

これが緊急治験の形でヒトに本格的に投与されたのは,2014年をピークに西アフリカで大流行した際が初めてでした.しかし致死率が50%を超える病原体であることから倫理的理由によりプラセボ群を設定せず,実薬群のsingle armのみの治験でした.それゆえに,治験結果は疑問視されました.

次の2018年のコンゴ民主共和国での大流行では,効果が疑問視されたままのエボラワクチンを人道的使用 compassionate use として投与しています.この使用実績を2019年に解析したところ,接種者のエボラ発症が未接種者に比べて97.5%抑えられていた(VEが97.5%だった)ことが判明し,ようやく効果が実証されました.

それを踏まえ,WHOは2019年,rVSV-ZEBOVに事前認証 prequalification を与えました.

WHOによる事前認証とは,薬剤や医療機器等を自国で検証することが困難な国・地域向けにその品質や安全性を国際機関として担保する制度のことで,“WHOによるお墨付き”に相当します.

WHO事前認証に至るまで,ヒト治験開始の2014年から数えても5年,動物実験レベルからは14年,病原体発見からは43年が経過しています.

AstraZeneca治験かんたんまとめ

Sputnik Vがまだ2回接種後の full analysis を発表しておらず,Johnson&Johnsonも論文化されていないことから,本ページではAstraZeneca(Oxfordワクチン)の治験 phase 3 についてのみ記述します.

AstraZenecaワクチン
参加者
  • 18歳以上(最高齢,平均,中央値記載なし)
  • 除外基準は明記なし
投与法
  • 実薬:次のいずれか
    • 1回目低用量LD→2回目標準量SD
    • 1回目標準量SD→2回目標準量SD
      • LD:2.2×1010含有
      • SD:5.0×1010含有
  • プラセボ:髄膜炎菌ワクチンACWY
    • 安全性解析対象では一部生理食塩水
  • 2回接種;4-12週以上
  • 筋注(三角筋)
COVID発症の予防効果

2回目接種14日後以降のCOVID発症

実薬LD→SD群 プラセボ群
3人
1,367人
30人
1,374人
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
90.0% (67.4-97.0)
実薬SD→SD群 プラセボ群
27人
4,440人
71人
4,455人
Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
62.1% (41.0-75.7)
重症COVIDの予防効果
有害事象
  • 重篤有害事象は死亡含めて両群間に明らかな偏りはない
  • 実薬群2回目接種14日後に発生した横断性脊髄炎1件はワクチンとの関連の可能性がある