コロナワクチン 授乳婦および授乳児
総論 | ||||||
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治験+承認後研究 | |||||||
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更新履歴
日付 | 更新内容 |
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2021年2月16日 | 一般公開 |
授乳婦および授乳児への影響は理論的に考えにくい
授乳については,妊娠よりは検討事項が少ないと言えるでしょう.
一般論として,非生ワクチンは授乳婦に安全に接種できます.非生ワクチンで体内を循環するのは病原体の抗原のみであり,仮に乳汁中に分泌されたとしても乳児に理論的な影響はありません.
- 参考までに,生ワクチンのうちで黄熱ワクチンは授乳婦には禁忌とされています.世界で3例のみではありますが,授乳婦に黄熱ワクチンを接種した後で授乳された新生児がウイルス性脳炎を起こし,脊髄液からワクチン株ウイルスが検出されたという報告があります.しかし非生ワクチンではこのようなことは理論的にあり得ません.
そのため,少なくともmRNAワクチンは授乳婦で禁忌とする理由はないでしょう.
ウイルスベクターワクチンについては,AstraZenecaワクチンに含まれるベクターウイルスは増殖能を欠失させてあるため,有意に乳汁分泌されるほど体内を大量に循環するとは考えにくいです.また,仮に乳汁分泌されて乳児の口に入ったとしても,そもそもチンパンジーアデノウイルスはヒトに病原性を持たないため,理論的には問題ないことになります.
しかしいずれのワクチンも,授乳婦に接種した場合の乳児の安全性を治験で検証したわけではありません.乳児または授乳婦における未知の有害事象が今後報告される可能性は否定できません.
これらを踏まえると,授乳婦のCOVID感染リスクや重症化リスクが高い場合に,接種の利益が未知の有害事象のリスクを上回ると判断するならば,充分な説明の下に決断することが必要でしょう.説明においては,乳児が何らかの疾病状態になった場合に「授乳婦が接種を受けたことが原因だ」と心理的に結び付けてしまう可能性も共有すべきでしょう.
2021年2月8日付でJAMA誌に,妊婦および授乳婦へのCOVIDワクチン接種を論じた意見が投稿されました.
基本的に本ページと同様のスタンスで論じています.ご参照ください.
授乳婦:日本での指針
厚生労働省は2021年1月31日現在,授乳婦への接種について何ら指針を示していません.
サイト管理者が検索した範囲では,授乳婦への接種について声明を出している学会等もありません.
授乳婦:承認済みワクチンの添付文書記載
開発元 | 日本での製品名 | 添付文書の記載 |
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Pfizer | コミナティ筋注 | 9.6 授乳婦
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授乳婦:各国での指針
以下に各国政府等の指針をまとめます.
米国 | mRNAワクチンが授乳婦および乳児に与える影響に関するデータはない.mRNAワクチンは乳児へのリスクになるとは考えられない.接種優先対象の授乳婦は接種を選択してもよい |
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英国 | 非生ワクチンの授乳婦への接種について既知のリスクはない.授乳婦に接種してもよい.授乳が乳児の発達と健康にもたらす利益および授乳婦のCOVIDワクチン接種の必要性を充分考慮すると共に,授乳婦と乳児への安全性は検証されていないことも説明すべきである(PDF13ページ) |
カナダ | 授乳婦のリスクアセスメントの結果,接種による利益が未知の有害事象のリスクを上回ると判断した場合は,効果と安全性は検証されていないことも含めた充分なインフォームドコンセントの下で接種してもよい |
オーストラリア | 授乳婦へのPfizerワクチンの接種について専門家グループが検討中であり,近日中に発表する予定(2021年2月2日閲覧時点) |
シンガポール | 授乳婦は接種してもよいが,接種後5-7日間は授乳を中断すること |
ノルウェー | 授乳婦への接種について言及なし |
スウェーデン | 授乳婦への接種について言及なし |
イスラエル | 授乳婦への接種について言及なし |