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更新履歴mRNAワクチン2製剤
mRNAワクチンはPfizer/BiONTech社製(日本名「コミナティ筋注」)とModerna社製の2製剤があります.
mRNAワクチンがヒト用に実用化されたのはこれら2製剤が史上初めてです.
本ページではmRNAワクチン2製剤の治験を対比しながら解説します.
それぞれの治験の phase 3 論文は下記です.
ワクチン
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引用
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初出日
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Pfizer コミナティ筋注
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Polack, Fernando P., Stephen J. Thomas, Nicholas Kitchin, Judith Absalon, Alejandra Gurtman, Stephen Lockhart, John L. Perez, et al. “Safety and Efficacy of the BNT162b2 MRNA Covid-19 Vaccine.” New England Journal of Medicine 383, no. 27 (December 31, 2020): 2603–15. https://doi.org/10.1056/nejmoa2034577.
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2020年12月10日
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Moderna
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Baden, Lindsey R., Hana M. El Sahly, Brandon Essink, Karen Kotloff, Sharon Frey, Rick Novak, David Diemert, et al. “Efficacy and Safety of the MRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine.” New England Journal of Medicine, December 30, 2020. https://doi.org/10.1056/nejmoa2035389.
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2020年12月30日
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mRNAワクチン治験かんたんまとめ
2製剤の治験論文の主要なところを整理します.
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Pfizer コミナティ
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Moderna
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参加者
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- 18-95歳(平均値51.4歳)
- 妊婦,小児は対象外
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投与法
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- 実薬:30μg/0.3mL
- プラセボ:生理食塩水
- 2回接種;21日間隔
- 筋注(三角筋)
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- 実薬:100μg/0.5mL
- プラセボ:生理食塩水
- 2回接種;28日間隔
- 筋注(三角筋)
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COVID発症の予防効果
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2回目接種7日後以降のCOVID発症
実薬群
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プラセボ群
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8人 2,214人年
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162人 2,222人年
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Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
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95.0% (90.3-97.6)
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2回目接種14日後以降のCOVID発症
実薬群
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プラセボ群
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3.3人 1,000人年
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56.5人 1,000人年
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Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
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94.1% (89.3-96.8)
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重症COVIDの予防効果
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接種後時期を問わない重症COVID
実薬群
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プラセボ群
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1人 4,021人年
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9人 4,006人年
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Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
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88.9% (20.1-99.7)
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2回目接種14日後以降の重症COVID
実薬群
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プラセボ群
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0人 14,073人
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30人 14,073人
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Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
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100% (算出不能-100)
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有害事象
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- ワクチン反応性症状はいずれも実薬群で多い
- その他の重篤有害事象は死亡含めて両群間に明らかな偏りはない
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- ワクチン反応性症状はいずれも実薬群で多い
- その他の重篤有害事象は死亡含めて両群間に明らかな偏りはない
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一見してわかるとおり,両ワクチンの治験は非常に似通った結果となっています.
かつ,2回目接種直後(7日or14日後以降)のCOVID発症予防について,vaccine efficacy, VE は95%前後と極めて優れた結果を示しました.
加えて,重症COVIDについても約90%超の VE を示し,少なくとも治験期間中の観察においては,抗体依存性感染増強 ADEの懸念を跳ね返しました.
有害事象については,両ワクチンとも「ワクチンとして当然予想される接種部位疼痛や発熱などの反応性症状」が実薬群で多く観察されたのみで,ワクチン関連が疑われて注意を要する重篤有害事象はほぼありませんでした.
一言で言えば,「効果が期待できて,重篤または接種をためらう有害事象が観察されないワクチンを,よくぞこの短期間で実用化までこぎつけたものだ」と感嘆するレベルです.
以下,より詳細に検討します.
mRNAワクチン治験:対象者
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Pfizer コミナティ
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Modernaワクチン
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年齢
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- 16-89歳(中央値52歳)
- 55歳以上が42.3%
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- 18-95歳(平均値51.4歳)
- 65歳以上が24.8%
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背景
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- 基礎疾患ありが20.9%
- 女性が48.9%
- 白人が82.9%
など
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- 重症化リスクありが22.5%
- 女性が47.4%
- 白人が79.5%
- 登録時スクリーニングでCOVID-19既感染が2.2%
など
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除外基準
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- 妊婦は除外
- COVID-19既感染は除外
- 免疫抑制状態は除外
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- 妊婦は除外
- HIV,B型肝炎,C型肝炎の各感染者は除外
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対象人数
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Per protocol解析対象:
- 実薬群 18,198人
- プラセボ群 18,325人
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Per protocol解析対象:
- 実薬群 14,134人
- プラセボ群 14,037人
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mRNAワクチン治験:投与方法
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Pfizer コミナティ
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Modernaワクチン
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実薬
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プラセボ
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接種スケジュール
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投与経路
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mRNAワクチン治験:効果(エンドポイント)と有害事象の検証方法
以下の表ではすべて「実薬群ではプラセボ群に比べて」を省略しています.
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Pfizer コミナティ
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Moderna
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一次エンドポイント
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- 2回目接種の7日後以降の時点で,COVIDの既往がない者での,COVIDの発症が減少するか?
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- 2回目接種の14日後以降の時点で,COVIDの既往がない者での,COVIDの発症が減少するか?
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二次エンドポイント
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- 各接種後の時期を問わず,COVIDの重症化が減少する,又は増加するか?
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- COVIDの重症化が減少する,又は増加するか?
- Methods欄には観察時期の言及はないが,Resultsを読むと「2回目接種の14日後以降」の重症COVIDを評価していることがわかる
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予想される有害事象
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- 各接種後の7日以内に,事前予想されるワクチン反応性症状が増加するか?
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- 各接種後の7日以内に,事前予想されるワクチン反応性症状が増加するか?
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その他の有害事象
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- 2回目接種の1ヶ月以内に,反応性症状以外の有害事象が増加するか?
- 2回目接種の6ヶ月以内に,反応性症状以外の重篤な有害事象が増加するか?
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- 2回目接種の28日以内に,反応性症状以外の有害事象が増加するか?
- 1回目接種の759日(2年1ヶ月)以内に,反応性症状以外の重篤な有害事象が増加するか?
- 治験からの脱落につながる有害事象が増加するか?
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mRNAワクチン治験:効果 Vaccine Efficacy
下表において「平均追跡期間」はいずれも論文中にはありません.論文中に記載された人年/人日と解析対象人数/at risk人数から,サイト管理者が逆算したものです.
両ワクチンも「2回目の7/14日後以降」という極めて短期間でエンドポイントを見ているため,予防効果がどれぐらいの期間続くのか予想できません.せめて2回目接種からCOVID発症までの平均追跡期間を見ることで,「60%や95%というVEが保たれるのは平均で少なくともどのぐらいの期間か」を考えることができます.
もちろん,両論文ともKaplan-Meier法による累積発症グラフを掲載しており,そちらの方が視覚的にわかりやすいです.是非ご参照ください.著作権の関係でグラフを本ページに転載することができないため,代わりに平均追跡期間を計算した次第です.参考程度にお考えください.
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Pfizer コミナティ
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Moderna
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一次エンドポイント
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2回目7日後以降のCOVID発症
実薬群
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プラセボ群
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8人 2,214人年
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162人 2,222人年
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Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
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95.0% (90.3-97.6)
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実薬群 at risk 人口
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プラセボ群 at risk 人口
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17,411人 平均追跡期間 46.4日
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17,511人 平均追跡期間 46.3日
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2回目14日後以降のCOVID発症
実薬群
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プラセボ群
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3.3人 1,000人年
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56.5人 1,000人年
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Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
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94.1% (89.3-96.8)
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実薬群解析対象
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プラセボ群解析対象
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14,134人 平均追跡期間 86.1日
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14,073人 平均追跡期間 84.9日
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二次エンドポイント
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接種後時期を問わない重症COVIDの減少又は増加
実薬群
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プラセボ群
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1人 4,021人年
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9人 4,006人年
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Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
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88.9% (20.1-99.7)
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実薬群at risk人口
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プラセボ群at risk人口
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21,314人 平均追跡期間 68.9日
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21,259人 平均追跡期間 68.8日
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2回目14日後以降の重症COVIDの減少又は増加
実薬群
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プラセボ群
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0人 14,073人
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30人 14,073人
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Vaccine Efficacy (95%信頼区間)
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100% (算出不能-100)
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